彼女になれない彼女
「誰?」

平良が小さく聞いてきた。

「夏期講習で会った東高の人なんだけど、数学聞いてたんだよね。」

正直に伝える。

「俺いるじゃん。」

あれ?
なんか平良怒ってる?
口調がいつもと違うような気がする。

「うん、でも平良は日中部活だから・・・。」

私の答えに平良がため息をつく。

「夜こうやってご飯食ってる時に聞けばいいじゃん。」
「うん、そう、そう。だから今日は平良に聞こうと思って。」
「今までそいつに聞いてたの?」
「え?」

平良の口調が全然違う。
怖い。
怒ってる。

え、そんなにダメだった?
他の人に聞いてたこと。

「ちょっとだけ・・・。」

少し嘘をついた。

また平良がため息をつく。

沈黙が流れる。

平良はご飯を食べ始めた。
私ももじもじしながらご飯を食べる。

いやだなあ、こういう感じ。

なんでそんなに怒るの・・・。

少し視線を上げて平良を見るものの、平良は私と全く視線を合わせようともしない。

平良はあっという間に食べ終えてしまった。
お膳を厨房のところまで運ぶ。
「ご馳走さまでしたー!」
平良の声が聞こえた。

ああ。
もう帰るんだ。

平良が「ご馳走さま」を言うときはいつも帰る時だ。

私の予想通り、平良は私の元に寄ることなく、そのまま店を出て行った。

最後まで私を見ることはなかった。

私、そんなに悪いことをしたんだろうか。
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