期間限定『ウソ恋ごっこ』
保健室でふたりきり
「失礼します。……あれ?」


保健室のドアを開けた真央ちゃんが、キョロキョロと部屋の中を見回してからこっちを向いて、困った声を出す。


「どうしよう。先生、留守みたい」


「いない? 奥の方にいるんじゃないのか?」


近藤先輩があたしを抱っこしたまま中を覗き込んだ。


あ、本当だ。誰もいないや。


真っ白なシーツが敷かれたベッドや、薬棚や、乙女の敵の体重計とか、いかにも保健室な器具はあれども肝心の先生がいない。


たしか入学したとき、担任が話してたっけ。


保健室にはたくさんの薬品が置かれてあるから、生徒が勝手に中に入っちゃダメな決まりになってるとか。


先生、どこ行ったんだろう。こういう場合って保健室の外で待ってればいいのかな? でもいつ戻ってくるのかな?


って思案していたら、近藤先輩があたしを抱えたまま躊躇(ちゅうちょ)なく中に入り込んでいく。
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