高嶺の花沢さんは恋の仕方がわからない
私は自分のデスクに腰を下ろすと、周りに気づかれないように息を吐いた。

西口くん、つきあっている人がいたんだ…。

心の中で呟いたら、
「西口さん、おはようございます」

当の本人が出社してきたみたいだ。

私は彼の顔を見ないように目をそらすと、デスクの引き出しから書類を取り出した。

パソコンの電源を入れて起動されるのを待ちながら、書類の確認をする。

これは『霧ヶ峰電気』に提出する書類で…。

書類を持っている自分の手が震えていることに気づいた。

同時に、西口くんの話にショックを受けている自分に気づかされた。

私に関しては、人とコミュニケーションをとれるようにするためのリハビリとしてつきあってくれているだけなんだから…。
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