あなどれないね、世唯くん。



叶わない恋なんて捨ててしまえばいいのに。

どうせ、わたしが世唯くんと加奈ちゃんの入れる隙なんか1ミリもない。


「……千景と、なんかあるんだろ?」

「っ……、」


「やめればいいだろ、あんなやつ」


やめたいよ……諦めたいよ。
何度も思ったことある。

でも、そんな簡単に切り捨てられるものじゃない。


……人を好きになって、想い続けることは難しいことじゃないのに。

嫌いになることは、なぜか簡単にできない。


「いいじゃん……俺を利用すれば」


耳元でそうささやかれて、一瞬心がグラッと揺れかけて傾いた。


視線が絡み合った瞬間、時が止まったかのようにどちらも固まった。

……かと思えば、真尋くんの顔がどんどん近づいてきて……。


「俺を好きになれよ……糸羽」


唇が重なる寸前━━━━━━。

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