あなどれないね、世唯くん。
いま顔が見えない状態でよかった。
だって、どんな顔をしてこの話を聞けばいいかわからないから。
「それで2年で同じクラスになって、少しずつ話せるようになったから。
でも花町は全然俺のことクラスメイト以上として見てないし。
……他の誰か、手に入らない何かを追ってるような気がした」
「っ……」
「だから、チャンスなんてないと思ってたけど……。
今、俺すげーずるいこと考えてる」
さっきまで抱きしめていたはずの力が緩められ、身体を離された。
そのままゆっくり、視線が絡み合う。
「……今、泣いて弱ってる花町見てたら、
そこに上手くつけ込んで……俺のものになればいいのにって」
痛いほど伝わってくる。
こんな真っ直ぐに想われることはとても幸せなこと。
きっと、この手を取ってしまえば苦しさ、もどかしさから抜け出せる。