あなどれないね、世唯くん。
急なことにびっくりしたけれど、こんなにも直接千景くんの体温を感じて、意識が一気に集中する。
「花町さん……可愛いとこあるね。
俺、正直で嘘つけない素直な子すき」
フッと笑いながら、わたしの反応を愉しむように顔をグッと近づけてくる。
その近さに、思わず肩に力が入って顎を少し引いた。
「……これ。
アラームが鳴らなかったの」
そう言って、空いているほうの手でスマホを見せてきた。
「ちゃんと時間どおり戻ってこようとしたんだよ」
「あっ…そ、そうだったんだ」
「うん、そう。でも少し遅れちゃった」
「そ、そっか」
遅れた理由はわかったので、早くこの距離をどうにかしたいのに、千景くんは握った手を離さないし、息がかかるくらいの近さで話すから、もう心臓が異常なくらい音を立ててる。
ここで平常心で、平然とした顔を作れるほど、わたしは器用じゃない。