卑劣恋愛
気になること
チャンソーの音はまだ聞こえてきていた。


でも、近い場所じゃないみたいだと、音の大きさからわかった。


きっと、山のもっと奥にいるのだろう。


あたしはそっと立ち上がってみると少しよろけた。


足も手もジンジンとしびれていて、なかなか思うように動かない。


このまま道に出て山を下りても、途中で千恵美に捕まるかもしれない。


そう考えたあたしは、山の中をゆっくりと歩き始めた。


まだ日が高いから、道が見える範囲にいれば木々の間を歩いていても安心だった。


そのまま真っ直ぐ、父親を見た場所まで移動してきてみた。


あの時は夜だったから場所がハッキリしないけれど、たしかこの辺りを上へ向かっていたように思う。


足元を確認すると、草木が踏まれてちょうど足跡が残っているのがわかった。


やっぱり、ここだったんだ!


あたしは小屋の中にいる2人に気が付かれないよう、ゆっくりと山を登り始めたのだった。

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