卑劣恋愛
「だからほら、武は自分の気持ちに正直になっていいんだよ?」


しかし、武はまた左右に首を振ったのだ。


どうして?


なんで武は正直な気持ちを伝えてくれないの?


今はもう、2人きりなのに……。


あたしは奥歯を噛みしめて、立ち上がった。


「仕方ないよね。武が正直になれるように、あたしが手伝ってあげる」


ブツブツと呟きながら、ペンケースからカッターナイフを取り出した。


それを見ていた武が身をよじってもがき始めた。


「大丈夫だと武。すぐに終わるからね?」


あたしは武を安心させるために優しい声をかける。


そして、カッターナイフの刃を武の足に押し当てた。


武はビクリと体を撥ねさせて、痛みに顔を歪めた。
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