卑劣恋愛
「ごめんね? ごめんね武。でも、これで武は素直になれるよね?」


押し当てた刃を力強く下に引く。


すると、一筋の血がしたたり落ちた。


武はクローゼットの壁に背中をもたれされて、肩で呼吸を繰り返している。


「どう? 武はあたしのことが好きだよね?」


あたしは血の付いたカッターを片手に持ったまま、もう1度質問をした。


すると武は目に涙を浮かべて、首を縦に振ったのだった。


やった……!


やっと武の気持ちを聞くことができた!


あたしは天にも昇る気分だった。


「ここまで来るまで、あたしたち長かったよね。ずっとずっと、誰かに邪魔されてたもんね?」


嬉しすぎて、涙が出て来た。


もしかしたら武の涙も嬉し涙なのかもしれない。


照れ屋な性格を乗り越えてあたしに気持ちを伝えられる事が、泣くほど嬉しいのかもしれない!


「武……あたしは世界一幸せだよ。ううん、2人で世界一幸せになろうね?」


あたしはそう言い、カッターの刃についた血を舌で舐めとったのだった。
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