卑劣恋愛
「起きてるよ、なに?」


「今日は学校どうする? 行ってみる?」


顔をのぞかせた母親があたしを気遣いながらそう聞いて来た。


どうやら、あたしがいなくなった原因は学校にあると思っているようだ。


あながち間違いではない。


「もう少し休んでもいい? 怪我もまだ治ってないし」


あたしは手の怪我を見せてそう言った。


大した怪我じゃないし、私生活に支障も出ていない。


でも、これが大きな言い訳に利用できた。


「そうね。じゃあ、お母さんから学校へ連絡しておくから。なにかあったら、すぐに言うのよ?」


母親はそう言うと、部屋を出て行った。


その後ろ姿を見送ってニヤリと笑う。


武が家にいるのだから、あたしが学校へ行くわけにはいかない。


智樹だってきっと今日は学校を休むだろう。
< 217 / 262 >

この作品をシェア

pagetop