卑劣恋愛
ベランダから下を見ると丁度グラウンドがよく見えた。


まだ授業が終わったばかりだから、どこの部活動も開始されていない。


「話ってなに? あたし、これから用事があるんだけど」


早口にそう言うと、智樹がたしの目の前に立った。


武より背が低いけれど、あたしからすれば見上げることになった。


「俺、ノドカのことが好きなんだ」


その言葉にあたしは瞬きを繰り返した。


智樹は一体なにを言ってるんだろう?


「ちょっと、なにを言ってるのかわからないけど?」


たぶん冗談だろうと思って、あたしは苦笑する。


しかし、智樹は真剣な表情を崩さなかった。
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