卑劣恋愛
「本気なんだ」


「でも、智樹は千恵美のことが好きなんじゃなかったの?」


千恵美は武のことが好きで、だから口論していたはずだ。


あたしの推理は成り立っている。


「違う」


智樹はキッパリと否定した。


あたしの中で何かが崩れるような音がした。


「俺はノドカのことが好きなんだ。だから今朝、武と決着をつけるつもりで――」


「決着ってなに?」


あたしはすかさず口を挟んだ。


「決着をつけるもなにも、あたしと武は付き合ってるんだけど?」


最初から智樹が割って入るような隙間はない。


智樹はあたしの言葉に傷ついたように顔をしかめた。


「今更なに? みんな知ってる事実じゃん」


あたしはニッコリとほほ笑む。
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