卑劣恋愛
☆☆☆

結局、それから先あたしはあまり眠ることができなかった。


父親のあんな姿を見てしまって、その姿を忘れることができなくなってしまったのだ。


眠れたとしても、笑いながら藁人形に釘を打ちつける父親の姿が夢に出て来そうで怖かった。


「おはよう……」


いつもの時間になるまで待って制服に着替え、キッチンへ向かう。


キッチンからは香ばしいパンの香りがしてきていて、先に父親が食べ始めたところだった。


「おはようノドカ。今日はお弁当は?」


「もちろん、持って行くよ」


あたしは母親に答えながら席に座った。


チラリと父親へ視線を向けるが、特に変わった様子は見られない。


昨日のあれは、あたしの夢だんじゃないだろうかと疑うほどだ。
< 71 / 262 >

この作品をシェア

pagetop