卑劣恋愛
「武くんは食べてくれたの? もし武くんと付き合うことができたら、お母さん大歓迎よ」


そう言う母親につい『付き合ってるし』と、言いそうになって口を閉じた。


別に公表してもいいのだけれど、武を家に呼べと言われそうでちょっと怖い。


なにせ武は照れ屋だから、彼女の両親と顔を合わせるなんてとんでもない勇樹が必要になるはずだ。


その辺は、あたしは武に合わせるつもりでいた。


あまり焦って家族に紹介をして、逃げられても嫌だし。


「好きな人がいるのか」


不意に、父親がそう聞いて来たのであたしはむせてしまった。


「まぁ……ね……」


あたしはまた、昨日の父親の様子を思い出す。


お父さんだって好きな人がいるんだよね?


近所の大学生のお姉さんだよね?


そう聞きたいが、もちろん聞く事はできなかった。
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