卑劣恋愛
「こんにちは。あの、智樹はいますか?」


千恵美の声はワンオクターブ上がっていて、この状況は全く理解できていない様子だ。


「智樹なら来ないよ」


赤毛が答える。


その瞬間、千恵美の表情が険しくなった。


「来ない? でも、ここで待ってるって言われたんですけど」


「そんなのいいじゃん。それより、今日は俺たちと楽しもうぜ」


緑毛が入って来たドアを閉め、同時に赤毛が千恵美の手首を掴んだ。


しかし、千恵美は逃げようとしない。


「あなたたち2人が智樹になにかしたんですか?」


途端に低い声になってそう聞いている。


どうやら、智樹がなんらかの被害に遭ったのではないかと考えているようだ。
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