とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
 女の子の態度だけでいけるかいけないか分かるなんて。

 確かに御曹司で、性格もよさそうに見えるし顔もいいし完璧かもしれないけど。

 だったら顔色がわかる簡単な女性と沢山遊べばいいのに。

 私の心はとっくに冷えている。キスしてと迫ったのは私だったけど、一矢くんが女性との経験が豊富なことだけは分かった。

 私みたいに男性と交流さえなかった女は、手玉にとれるように簡単な存在なんだろうね。

「ぷっ」

「なんで笑うの? 女性の敵」

「何を勘違いしてるのか分からないけどさ、多分違うよ」

拳で口を押えながら、一矢くんは体を震わせていた。

「俺は今までの華怜の反応の冷たさと今の反応を見て、ってことで。女性と遊びまくって得た経験なんてないよ。そんなもの、――華怜の前では無意味だし」

「はあ? その顔とその肩書で遊んでないっていうの?」

「どっかの『クソ』がつく父親のせいで、仕事が忙しくて遊ぶ時間はなかったと断言しとく」

それか、俺は実は一途なのかもね。

此方を向いて、ソファにもたれ掛かりながらの流し目。

自分の顔の良さで誤魔化そうとしても、私だけは騙されるものか。

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