とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
「俺、今やばいぐらい楽しい」

「最低」

 空になったカップを手に持ち、キッチンへと向かう。

 最低だと思いつつも、ソファのすぐ横のカーテンが怖くて、彼の後ろをついていった。

「俺のことを親の仇って感じで睨んできたときは、悲しかったんだけど、俺は別に恥じる行為もしてないし、華怜への気持ちも嘘じゃないから。俺だけは華怜の前で偽らないように決めてたんだ」

「……そおだっけ。クールぶってお笑い好きなのも隠していたんじゃないの」

「格好つけは認めるけど。でも自分だって衝動的に華怜にプロポーズするぐらい舞い上がってたから、頑なに視線を合わせない君と一緒にいて心が折れそうにならなかったわけはない」

確かに私も素直じゃない部分は多々あった。

でも一矢がどう思っているかなんて全く考えていなかった。

借金の型に売られた形だと諦めていた部分もあるし。

「だから、こうやって普通に君と話せて、からかって、笑いあって、キスできてすげえ楽しいよ。絶対あきらめないね」
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