とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
「……」

「お、照れた?」

 照れたわけではない。経験値の少ない私には許容範囲以上の数々にショートしただけ。

「無関心より、嫌い、嫌いよりちょっと好き、その次はどうかな」

一人で盛り上がっているけど、別に私は一矢くんのことを『ちょっと好き』ではない。

触れても、平気。目を見れて話せる。

試す場合は好きに使って構わない。そう言われた存在だ。

言い返さず睨みつけて終わったが、珈琲を二人分いれる行為さえも楽しそうでなんだか少しだけ悔しかった。

まるで私の心みたいに、その夜は雷が何度も止んでは繰り返し鳴ったので、朝方まで一緒にホラー映画を見たのだった。

***

次の日、ずっと気にしていた美里に経過だけは報告してみた。

「驚いたよ。どうして、こうなったの」

色々と過程があったし、色々と過程を吹っ飛ばして私と一矢くんが同棲していることを、美里に搔い摘んで電話で話しただけ。

すると美里は新婚にもかかわらず、家から携帯と財布だけをもってタクシーでやってきた。

真っ青になっている美里に、申し訳なくてへらりと笑った。

「さっきも言ったけど、うちの祖父の病院の件で一矢くんに出資してもらったみたいな」

「それって脅迫されたってこと?」

「そういうわけでもないけど。あ、紅茶淹れるね」

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