とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
「ありがとう。美里は幸せだから、心にこびりついていた後悔が苦しいんだよね。自分だけ幸せになるのに後ろめたさがあるんだと思う」

「それだけじゃない。……それもあるのは否定しないけど、やっぱ華怜は私の自慢の友達だもん。私みたいな地味で真面目だけが取り柄の人間にも優しくしてくれたでしょ。華怜は世界で一番幸せじゃなきゃいやなの」



美里は真面目だ。しかも中学、高校と学級委員長、生徒会長を務めた責任感の強い芯のある性格。

私が何を言ってもきっと聞かないと思う。

「よし。一矢くんが帰宅したら、言いたいこといいまくろう。好きに言おう言おう」

 観念するしかないので、冷蔵庫から酎ハイを何缶か取り出す。

「旦那には連絡しといたら? 泊ってもいいよ」

「泊まる! 洋服貸して。あと武器にフライパンも」

「一矢くん、顔はいいんだからフライパンで攻撃はやめてあげて」

一缶、二缶、……四缶目で美里は頬を真っ赤にしてソファに倒れ込んだ。

眼鏡を放り投げたので、テーブルの上に置く。

ここまで彼女が酔うのは初めてだ。

「子供のときって、学校が小さな社会じゃない」

「うん」

「だから社会を荒らす問題児とか嫌いだし、会社から浮くのも嫌だったの。でも華怜は――」

ソファの上のクッションに顔を埋めた後、こちらを見た。

「華怜はルールの中で精いっぱいお洒落で、可愛かった」

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