とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
「劉宮の髪って綺麗な髪だな」

自然とそんな言葉が零れ落ちてしまった。

授業中、肩よりも下で揺れている黒くて長い髪。

授業に夢中になって、指先で弄る毛先まで綺麗でおまけに甘く香る。

授業どころじゃないほど魅了されてついそんな言葉が出てしまった。

「あ……ありがとう」

驚いた劉宮さんは、目をぱちぱちさせて呆然としていたが、お礼を言うとさっさと前を向いてしまった。

それまで会話もしなかった俺に急に髪を褒められて、気味が悪かったかな。申し訳ないな。

もう少し仲良くなってから髪を触らせてもらえばよかったのかな。

不安になったが、艶やかな髪から覗く真っ赤な耳を見て俺の考えは杞憂だと悟る。

人見知りか、はたまた警戒してなのか、さっさと会話は終わったが一応悪い反応ではないらしい。それだけでほっとした。

それからしばらくして、劉宮の髪は今まで以上にサラサラで風になびくたびに嫌味じゃない高級な甘い香りを放っていた。

女性は、あの極上の髪のためにどれぐらい手入れするのだろうか。どれぐらい手入れしたらあの髪になるのだろう。

でもいつしか――。俺はその髪に触れてみたいという願望から、髪を褒めた時の劉宮の反応を見たくなった。

「ありがとう」ってそっけない言葉と正反対で真っ赤な顔で仏頂面になってしまう。

そんな不器用な彼女がなぜか愛しくて、胸が焦がれていた。
< 146 / 205 >

この作品をシェア

pagetop