とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
こくこくと頷く女子たちを冷ややかに一瞥すると、騒ぎを聞いて駆け付けた教師に、「俺がやりました」と告げた。

それからは慌ただしく、まずは駆け付けた父に頬をぶたれた。

生まれて初めて、調子のいい能天気な父親に手を上げられたと思う。

理由は明白で、髪を切るのは傷害罪だから。それと女性の髪だったから。

被害にあった劉宮さんは切られた自分の髪を見て、発狂してしまったという。

「なんでもっとスマートに助けられなかったんだ?」

親同士が仲がいいという理由で、ちょくちょく交流があった喬一くんが、家で謹慎中の俺を訪ねて来て、心配げに聞いてきた。

喬一君の家もごたごたしている時期だったので、俺の家に来る頻度は高かったが、俺のいきなりの行動に驚きを隠せないようだった。

「わからない。きったないガムを見た瞬間、とっさにハサミを探していた」

「でもまあ、俺が彼女でもガムをつけられたらそりゃあ髪を切るだろうね」

「自分で決断するより誰かにやられた方が、少しは気持ちが違うんじゃないかなって」
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