とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
――

二人目の嘘つきは、華怜さんの母親の美怜さんだ。

再会したのは、俺が大学時代。華怜さんの祖父の退職祝賀会で深紅の薔薇のような座やかなカクテルドレスで優雅に微笑んでいるのを見たときだ。

俺は彼女が血走った目で発狂するように怒鳴り散らしていた記憶しかないので驚いた。

それほど彼女を大切にしていたんだろう。

「お久しぶりです」

祝賀会でヒステリックに叫んだりしないだろうと高を括って話しかけた。

自分の父親の祝いの席で、取り乱したりしないと。

「あら、お久しぶりですね。その顔を二度と見るつもりはなかったのに」

ふん、と鼻であしらわれ目もそらされた。

「彼女は元気でしょうか」

「貴方に聞く権利があるの?」

 薔薇のようなドレス。それと同様に彼女の言葉は棘がある。

 微笑みながら、俺が傷つくことを眺めているように思えた。

「嘘よ。美里さんから、あの時の経緯を聞いている。あの子に、それでも華怜と友達でいてもいいかと直訴されちゃったわ。意外と度胸あるのねえ」

 しみじみというと、ウエイターが持っていたシャンパンを一つ手に取り、グラスを揺らした。

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