とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
 待合室に座って足を組み、目を閉じた彼。

二言しか会話していないのに、会話は成立せずに終わり、そのまま彼はソファの花になった。

「真琴くんに来てもらおうか?」

「んんー。白鳥さんと旦那さんが帰ってきたら全く不安はないよ。でも美里は帰ってまことって人に説教しといて」

 梃子でも動かぬという意思が感じられるし、美里のおろおろした様子も申し訳ない。

 それに。

 彼から、邪な視線が私になかった。

 例えると、話しながら胸を見たり、全身をチェックするような、さっき私が彼を値踏みするように眺めたように私を観察する様子がなかった。

 下心がないというか、興味なさそうだった。

 私が恐怖を感じる、馴れ馴れしい距離感や視線を彼はしない。

 それだけで、危険が感じられないので、恐怖はない。

「こんばんわー。来る途中で傘が折れちゃった」

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