とろけるような口づけは、今宵も私の濡れた髪に落として。
「すみません。どんな返事をしていいのかわからないけど、本当に好きじゃないとエッチしません」

彼も私と一度だけ遊んでみたかっただけ。

ニュアンス的にそう言われている気がした。

先ほどは本気になるなら~なんて口説いていた気がしたけど、あれは優しくして一口だけ食べたかっただけなんだ。

「俺は婚約してても、遊んでくれるなら歓迎ってこと」

「……それは、いやです」

「でもさあ、生涯男を一人しか知らないって嫌じゃない?」

「よくわかりません」

さっきまで取り繕っていた辻さんではなく、下心を感じさせるような男の人だと匂わせてくる。

目線は会わせられないけど、今の辻さんなら会話しても恐怖を感じられない。

得体の知らない相手ではなくなったのかな。

「じゃあ理解してよ。男なんて、少しでも気がある人にしか優しくしないし、本命が居るって宣言されたのに会われたらセフレ候補なのかなって期待しちゃうわけ」

「そうなんですか!?」

壁に大きく後ずさってしまった。

私は自ら、辻さんを誘ってしまったのか。

「ふ。君、慣れてなさすぎ。これは騙されそう」
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