極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
出店場所や、店内レイアウトの決定、調理設備の入手や役所関係の申請などもやらなければならない。

プランナーに依頼すれば簡単なのだが、資金不足のため、実乃里がひとりで調べて準備した。

時には失敗して損をすることもあり、開店までの道のりは険しいものであった。

それでも夢であるから、前向きな気持ちで頑張り通すことができたのだ。


「そうか。よくやった、えらいな」

龍司が頷いて褒めてくれたので、実乃里はまたしても泣きそうになり、急いで話題を変える。


「龍司さんは? 今はなにをされているんですか?」

「俺は、やりたいことをやっている」


曖昧なことを言って三切れめの卵サンドを頬張るから、教えてくれないのかと実乃里は不満に思う。

けれども、それを食べ終えると、隠さず話してくれた。


「俺は今、少年犯罪の方を担当しているんだ」


三年前まで組織犯罪対策部で杉谷の部下として働いていた龍司は、猿亘組の一件の後に、自ら異動願いを出した。

龍司は十代の頃はグレていて、非行歴のある少年だった。

あの時に杉谷が警察になれと誘ってくれなければ、もしかすると悪の道を突き進み、本物の極道になっていたかもしれない。


龍司が潜入捜査の間に気づいたことは、組に入ってくる若者たちが、最初から極悪人ではないということだ。

自分がなにをやらされているのか、よくわかっていない下っ端もいる。

極道になる前に、親身になって止めてくれる大人が側にいたなら……と、龍司は口惜しく思ってたそうだ。


だからこれからは、自分が悪ガキどもを叱って真っ当な道に進ませる。

かつて自分を救ってくれた杉谷のように。

そう思っての異動願いであったという。


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