極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
杉谷は今なにをしているのかというと、出世して組織犯罪対策部のトップに立っている。

龍司を利用して自分だけが偉くなったわけだが、龍司はそれで満足している。

そして今でもたまに、口外できない案件で、個人的に杉谷に使われているそうだ。


極道よりも悪巧みをしそうな杉谷の顔を思い出した実乃里は、思わず眉を寄せた。

龍司に危険な任務をやらせて、得をしたのが杉谷のみだというのが気に触る。


「杉谷さんって、警察なのに悪い人ですよね」

ついそのように非難してしまうと、龍司がクッと笑う。


「あの人はしたたかで、確かに善人とは言えないな。だが、俺の恩人であることは間違いない。受けた恩は返したいと、俺が望んでやったことだ」

「そうなんですか……。龍司さんが納得しているのなら、私もそれでいいと思います」


龍司の恩人を悪く思うのはやめにした実乃は、気を取り直して口元に笑顔を戻す。


「なんだか今日は雄弁ですね。話してくれて嬉しいです。あの頃は極秘任務を背負っていたから寡黙だったんですか?」

そう問いかければ、龍司が苦笑した。

最後のひと切れを手にした彼は、若干、照れくさそうに言う。


「いや、俺は今でも口下手な男だ。こんなに話す自分は、らしくない。久しぶりにこれを食べたから、舞い上がっているのかもしれないな」


潜入捜査中の龍司は、気を抜くことができない生活を送っていた。

極道たちに正体がばれぬよう、若頭として猿亘組のために働きつつも、幹部たちを一網打尽にするための証拠集めをする日々は、彼の精神と肉体を疲弊させた。

胃が痛むのは、日常的であったという。


「そんな中でも、ロイヤルの卵サンドはうまかった。これに救われていたのだと気づいたのは、あの町を去って半年くらいしてからだったな。夢にまでお前と卵サンドが出てきた。俺にとっては家庭の味で、それを自ら手放してしまったんだと、思い知らされた」


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