極艶恋~若頭は一途な愛を貫く~
龍司は一万円札を出してテーブルに置くと、コートを掴んで腕にかけ、席を立った。

実乃里も慌てて立ち上がり、帰ろうとしている彼の腕を掴んで引き止める。


「待ってください。結婚なんてしてません。恋人もいませんよ。この指輪は男性を避けるために、はめているだけなんです」


眉を寄せて振り向いた龍司に、実乃里は誤解を解こうと焦って説明する。

困った客である玄成のことと、アルバイトの伊藤が指輪を提案してくれた話を。


(玄成さんに効果はなかったのに、どうして龍司さんには効いちゃうのかな。早く取らないと……)


実乃里は急いで安物の指輪を外し、テーブルに投げ置いた。

目を瞬かせている龍司の右手を取り、両手で握りしめて、まっすぐに視線を合わせる。


「会えなくなっても、ずっと龍司さんを想っていました。私を抱いた人は龍司さんしかいません。過去にも未来にも、抱いてくれるのはあなただけです」

「未来にも……自信満々だな」


呆れて苦笑されても実乃里はへこたれず、笑顔を作ってみせる。


「だって私に会いにきてくれたんですもの。自信を持ってもいいでしょう。前よりいい女になったと思うんですけど、どうですか?」


少しおどけて余裕があるふりをした実乃里だが、本心ではそんなに自信があるわけではない。

もしかすると、実乃里に会いたかったわけではなく、卵サンドだけが恋しかっただけかもしれない。

相変わらずの童顔で、いい女になったとは少しも思っていない。

それでも強気なことを言わなければ、勇気がくじけてしまいそうな気がしたのだ。


(もう龍司さんと離れたくない。お願い、私の気持ちを受け止めて……)


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