一生に一度の「好き」を、全部きみに。

(咲side)

「はぁはぁ……!」

初めての場所に、初めての国。迷いながらも、空港から病院へと直行した。

慣れない英語でたどたどしく受付でたずねると、なんとか通じたらしく病室へと案内された。

「葵……!」

バンッ!

ドアを開けるとそこに葵の姿はなかった。

代わりにふたり、大人の男性がいた。

葵の父親と平木サンだ。

「鳳くん、これはこれは。よくきてくれたね」

「すみません、俺。こんな、いきなり……はぁっ」

はぁはぁと息を切らしながら返事をする。正直飛行機でもあまり眠れなくてヘトヘトだった。

「謝らなくていい。葵は手術中だよ」

「鳳くん、お久しぶりです」

「あ、はい」

相変わらず強面の平木サンと、にこやかな父親に向かって会釈する。

「とりあえず入って、こっちに座りなさい」

「失礼、します」

葵にたどり着いたという安堵から、崩れ落ちるようにしてパイプ椅子に腰かけた。

「平木サン、こないだはどうも」

「なんのことでしょう?」

とぼけていても目は真剣。葵のことを教えてくれたのは、他でもないこの人だ。

毎日屋敷をたずねていく俺に、しびれを切らしたのかようやく葵のことを教えてくれた。

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