一生に一度の「好き」を、全部きみに。
(葵side)
──ピッピッピッピッ
どこかから聞こえる電子音。
まどろみの中、意識がだんだんと戻ってきた。
精いっぱい目を開けようとしてみても、うっすらとしか開かない。
視界がボヤけて、ここがどこなのかわからなくなった。
たしか私は……移植手術を受けたはず。
「葵!?」
そばで声がしたので目をそっちに動かしてみる。
誰……?
わからない。
眩しくて視界がかすむ。
「葵……!」
懐かしい声が聞こえた気がした。
ううん、まさか。
こんなところに咲がいるわけない。
「大丈夫か? おい、しっかりしろ!」
下がっていきそうになる重いまぶたを、なんとか持ち上げる。
夢でも見てるのかな。幻聴まで聞こえるなんて。どれだけ咲のことが好きなの。
それ以前に、私、死んじゃったのかな……?
ふわふわした感覚は、まるで夢の中のよう。
「葵……俺だよ、俺!」
「さ、く……?」
声にならない声が出た。
「そう、俺だ」
そう言いながらかすかに右手に触れる手の感触。指をギュッと絡め取られて、やけにリアルな触り心地にハッとした。
夢じゃ、ない……?