百物語は終わらない
紫ちゃんの家は、アニメのお嬢様の住んでいるような立派な平屋のお屋敷だった。そのすごさに私は言葉を失う。

「陽葵!早いのね」

立派な門の前で立ち尽くしていると、後ろから声をかけられる。振り向くと、冬子たちだった。

深い青のワンピースを着た冬子が汗を拭く。黒のハーフパンツに明るいブラウンのビッグシルエットTシャツの勇気が、「怖くない、怖くないぞ!!」とブツブツ言っていた。

「楽しみだね〜」

紺のコーチジャケットにグレーのジョガーパンツの出海が微笑む。

ただ今、午後六時。今夜は眠れない夜になるんだろうな。そう思いながら、私たちは屋敷の中へと入る。

「お待ちしておりました」

出迎えてくれた紫ちゃんは、薄い緑の着物を着ていた。

「それ、普段着なの?」

私が訊ねると紫ちゃんはこくりと頷く。お嬢様はやっぱり普段着も違うんだ……。

広いお屋敷の中には、私たち以外誰もいないんだって。そのせいかどんなに小さな音でも響き渡る。

「この部屋で怪談話をしよう」

紫ちゃんがそう言って私たちを案内したのは、床が一面木でできた広々とした部屋だった。部屋の中心には百本のろうそくが置かれ、炎がゆらゆらと生暖かい風に揺れている。
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