冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~
最後のお色直しで着た鮮やかなオレンジ色のドレスを着た彩実と、燕尾服が良く似合う諒太の写真が掲載されていた。

十三時から始まった披露宴もすでに六時間を経過し、疲れているはずなのになぜか彩実の表情は生き生きとしていて輝いている。

「次のページを見てみろ」

「次?」

諒太に言われるがまま画面をスライドさせると、そこにも披露宴の写真が何枚かアップされていた。

「え、また姉さんと忍君?」

彩実はまじまじと写真を見つめた。

それは披露宴の最中だろうか、フランスの親戚たちに交じって楽し気に話している忍と、忍の腕にしがみつくように寄り添う晴香の写真だった。

以前彩実と諒太の婚約の記事と一緒に晴香と忍も婚約したという記事も出たが、そんな事実はないと忍に笑われ、デマだと思って忘れていたが。

「え、姉さんが忍君を追いかけてる? って、そんなことあるの?」

ふたりが一緒にいるところは見たことがなく、彩実は信じられない思いで記事を読むが。

「フランスに留学する小関家具の後継者のために、晴香さんもフランス移住を決意しフランス語の勉強中……?え、わけがわからない」

忍からはなにも聞いていないし、引きこもっているに近い状態の晴香がフランスに移住できるとも思えない。

「記事が本当かどうかはわからないが、一応白石家の次期社長夫人になったんだ。姉の恋人に限らず、夫以外の男と噂になるような軽はずみな行動は慎めよ。くれぐれも、得意のフランス語で小関の御曹司を誘惑しないように」

諒太は彩実の手からタブレットを取りあげ、そのまま家を出て行った。

「え、まさか本当に出かけたの……? 結婚したばかりなのに」

広すぎる家にひとり取り残された彩実は、しばらく呆然と立ち尽くし、なにも考えられなかった。

けれど、寂しさや悲しさに耐えながらしばらく経つと。

「なんだか、腹が立ってきた」

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