冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~
彩実を心配しつつも、如月ハウスの創業者であり現会長、そして彩実の祖父である如月賢一をよく知る芝本は、すぐに納得し興味深い表情で問いかけた。

「相手は、たぶん芝本さんも知ってると思うけど。白石諒太さん。白石ホテルの御曹司です」

「白石って、え、先月だったか、フランスのリゾートホテルを買収して話題になってたあの男か?」

あまりにも驚いたのか、思わず声をひそめてつぶやいた芝本に、彩実はこくりとうなずいた。

「そうです。リゾートホテルを三つも買収して、それでもまだ物足りないってインタビューで答えていたあの白石諒太さん。でも、お見合いする以前にこの話は先方から断られると思いますけどね」

相手は七歳年上の極上というより雲の上の御曹司。

おまけに端整な見た目はマスコミからいつも注目されている。

女性との噂は事欠かないような大人の男性が、自分との結婚を望むとは思えない。

それ以前に、お見合いの話自体、断るだろうと、彩実は気楽に考えている。

それでも彩実がお見合いをすると決めたのには、理由がある。

今手掛けているモデルハウスに、小関家具の商品を使うためだ。

事前にアポを取り、会長室に出向いて小関家具の商品をモデルハウスに是非採用したいと申し入れた彩実に。

『わかった、好きにしろ。それより見合いだ見合い。俺の正当な孫でもないお前がいつまでも如月の家にいられるとは思ってないだろう? どうせ結婚して出ていくなら如月の利益になる結婚をしろ』

賢一は威圧的な声でそう言った。

そして、傍らに控えていた秘書から写真とプロフィールが入った封筒を手渡されたのだ。

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