冷徹御曹司のお気に召すまま~旦那様は本当はいつだって若奥様を甘やかしたい~
それには諒太と彩実がふたりで臨んだのだが、白石家所有の豪華な振袖を着せられ、ホテル専属の有名美容師の手により髪は華やかに結い上げられ、メイクも丁寧に施された彩実の美しすぎる姿は大きな話題となり、彼女の名前がSNSのトレンドランキングで上位に入ったほどだった。

もちろんその姿は雑誌の表紙を飾り、コンビニや書店を覗くたび、自分の緊張した作り笑顔を眺める日が長く続いた。

その会見で、ふたりの結婚はいわゆる政略結婚のようなものだとはっきり口にした諒太の潔さも話題になったが、それ以上に話題になったのは、だからといって愛情がないわけではなく、これから互いを慈しみ愛情を育てていく自信はあるときっぱりと言ったときの、諒太の幸せそうな表情だった。

まるで、すでに自分は彩実を愛していると言わんばかりの満ち足りた笑顔に、世の中の女性の多くが悶絶したと、翌日以降のワイドショーは盛り上がった。

隣でその顔を見ていた彩実は、なんて嘘が上手なんだろうと、しばらく呆然としていたのだが、その姿もまた、諒太の言葉に感激し幸せのあまり言葉を失った婚約者として認識されてしまった。

まずは結婚式と披露宴という目標に向かって義務的に作業を進めるふたりの距離が急激に縮まることはなく、かといって喧嘩をする時間も余裕もなかった。

そして迎えた今日。

午前中にはチャペルでの結婚式が滞りなく行われた。

結局、今日彩実が式で身に纏ったドレスは試着で選んだものではなく、フランスの親戚のひとりが彩実のために日本に派遣した世界的に名前が知られたドレスデザイナーが仕立てたフルオーダーの特別なドレスだった。

事前になんの相談もなく、突然デザイナーが現れたときには彩実も麻実子もかなり驚いたが、本来ならフランスでも披露宴をしてほしいだろう気持ちを我慢している親戚たちの気持ちを諒太も理解し、大急ぎで仕立ててもらったのだ。

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