同窓会〜あの日の恋をもう一度〜
坂本が図書室を出て行くか、残って勉強をするのかはわからない。
でももし今戻ったら、告白を盗み聞きしていた事がバレてしまう。

いや、でも返却図書を元の位置に戻すのが私の仕事なのだから、何処の棚にいたかなんて気にしないかも知れないし、もし聞かれたら私も惚けたらいいだけだろう。

最終的に私は開き直って手元にある返却図書を全て元の位置に戻してカウンターへと戻り、図書室内を見渡したけれど、そこにはもう坂本の姿はなかった。

私は安堵の溜息を吐いて、下校時間までカウンターに座り、宿題を済ませた。

でもきっとあの時、坂本は私の存在に気が付いていたのだろう。
だから音楽会前日のあの時、連絡網を回してくれなかったんだ……。


懐かしい思い出が、急に切なく思えて、何故か胸が苦しくて私の表情から笑顔が消えた。

図書室のカウンター上に置かれたメモには、例の如く次の教室が書かれている。

『パソコン室、備品ロッカー』

パソコン室にも、坂本との思い出が詰まっている。
メモを回収すると、私は坂本と顔を合わさない様に俯いて立ち上がり、図書室を後にする。

パソコン室へは、特別教棟内の階段で移動だ。
坂本も図書室の施錠をすると私の後を追って来た。

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