···ファンなんてす


その日、撮影の帰りに
四人でランチを食べる事に

蒼空とメイソンは、
先に席に ついていて
沙織は、歩くようになった
紗也を連れておトイレへと

化粧室を出て
席まで歩く間

ひそひそと声が聞こえる

メイソンと蒼空を称賛する声
かっこいい・・
イケメン・・・
外人・・めちゃタイプ・・

クスクス笑っていると
紗也が
「ママ?」
「あっ、ごめんね。
行こうか?」
と、紗也に話していると
「あの、すみません。
翻訳家の新倉さんでは
ありませんか?」
と、男性に言われて
思わず紗也を自分の後ろに隠して
「はい、そうです。」
と、こたえると
「あっ、良かった。
俺、新倉さんのファンで。
あ、ファンというか
新倉さんの翻訳した本が
大好きで。」
と、頭をかきながら
にこやかに話す男性に
悪い人ではないと思い
「ありがとうございます。
とても、光栄です。」
と、言うと
「あ~、いえ
あの、握手していただいても?」
と、言う彼に、どうしたものかと
思っていたら

人影ができて・・やはり・・・
と、見上げると
メイソンが紗也を抱き上げて
『私の妻に、何か?』
と、上からイタリア語で
その男性に詰め寄ると
「あっ、いえ、大丈夫です。」
と、わけのわからない日本語を
言って、その場を離れて行った。

メイソンは、男性の後ろ姿に
肩をあげて 私を見る
その顔は、不安な顔をしているから・・
『ありがとう、メイソン。』
と、頬に手をあてて伝えると
彼は、バァっと、明るい顔になり
空いている方の手で
私の手を握り
片手は、紗也を抱いて
蒼空の座っている席に向かう

蒼空は、半ば飽きれぎみで
『まったく、パパは?』
『だって、嫌なんだから。』
『うふふっ、ごめんね、蒼空。』
と、言うと、蒼空は、
『仕方ないね。
パパは、ママが大好きだから。』
『ママは、愛してる。
ソラとサヤは、大好きだよ。』
と、言うメイソンに
『もう、いちいち訂正しなくても。』
と、沙織が言うと
蒼空は、笑いだして
メイソンと沙織も笑った。

紗也は、三人を見て
ニコニコしていた。
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