隠れイケメンの王子様に恋しました
「何してんだよ兄貴」

入って来たのは御影部長。
走って来たのか息が荒く副社長となの葉の顔を見るとつかつかとソファーに近付く。

「おや、思ったより早かったな?ゆきと」

余裕でニヤリと笑う副社長。

ゆきと?
呆然と御影部長を見上げていると横に立った部長はなの葉の腕を取って立たせた。

「は…え?」

「もう用は済んだだろ?帰らせてもらう」

そう言うとなの葉の腕を引っ張り連れ出した。

何が何だかわからないなの葉はされるがまま早足で先を行く部長に転ばないように付いていく。

エレベーターのボタンを押すと直ぐにドアは開き乗り込んだ。
そこでやっと腕を離され奥の隅っこで縮こまっていると一階のボタンを押した部長さんがなの葉の隣で壁に背を預けため息をついた。

あ、あの…近いんですけど…。

ちょっと動けば腕が触れる距離。
俯きドキドキする胸を押さえていると微かに爽やかな香りがしたけどそれどころじゃない。
近すぎて恥ずかしくて何も言えなかった。

部長さんも何も言わず長く感じた沈黙。

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