隠れイケメンの王子様に恋しました
「はあ、今の何だったんだろ…」

トイレの鏡の前で赤く染まる自分の頬を撫でながらさっきの大宮さんの姿を思い浮かべる。
髪を掻き上げた時に見えたきりっとした眉、眼鏡の奥に見えた切れ長の目。

どう考えても御影さんに似ている…いやいや激似、…どころか、本人!?

あれが御影さんだとして…なんで大宮さん?苗字が違う。
なんで大宮さんが…?

どう考えてもあの御影さんに見えてなの葉は混乱する。
さっきの一気に飲んだ梅酒が効いて来たのかふわふわと頭が回らなくて考えがまとまらない。

「はあ、ダメだ…今日はこのまま帰ろ…」

フラフラとした足取りでトイレを出ると、そこに橋本さんが待ってたかのように立っていた。

「なの葉ちゃん大丈夫?」

「あ、はい。でもちょっと酔っちゃったみたいなんでこのまま帰りますね?」

ははっと苦笑いを浮かべて隣を通り過ぎようとするとがしっと腕を掴まれた。

「送るよ。一人で歩けないだろ?」

「大丈夫ですよ、ちゃんと歩けます」

まあまあいいからと強引に手を掴まれ階段を降りて行く。
ずんずん行ってしまうので足を踏み外しそうになりよろけた。

「ほら、ちゃんと歩けないでしょ?」

「いえ、そうじゃなくて…」

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