隠れイケメンの王子様に恋しました
その手を離してほしいんですけどー!と思ってると、外へ出てタクシーが来るのを待つ。
その間、やんわり手を外そうとすると両手で手を掴まれ胸の上まで上げられた。

「あの、私一人で帰れるんで…」

「ねえ、なの葉ちゃん。俺結構本気なんだけど、俺と付き合わない?」

「…え?あの、遠慮します…」

「まあまあ、そう言わずに一度付き合えば俺の良さが分かると思うよ?」

にやりと笑うなかなかにしつこい橋本さんにどう断ろうかと働かない頭で考えているうちにタクシーが着いてしまった。
ほら行こう、とまた引っ張られて車に乗り込む橋本さんに、どうしよう!と思っていると、後ろからぐいっと体ごと止められてあっさりと手が離れた。

「一人で帰れ橋本!」

後ろから低い声がしてバタンとタクシーのドアを閉めた後ろの人はなの葉の手を掴むとずんずんと反対方向へと歩いて行く。
背の高いその人は背中からも分かるような怒りのオーラが見えてまた引っ張られる形になったなの葉は必死になってついて行く。

「あの、お…」

意を決して話しかけようとすると人気のない広い歩道で立ち止まり振り返ったその人。

「お前は!ほんとに誰にでもついて行くんだな!男なら誰でもいいのか!?」

「な…誰でもって…酷い…」

「橋本に付いて行こうとしてただろ?この間だって…」

怒り心頭のような大宮さんはイライラを抑えるようにまた頭を掻き乱す。
酷い言い様になの葉は目尻に涙が溜まった。

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