起たたない御曹司君の恋人は魔女
リラがやって来たのは金奈市から電車で、1時間ほど離れた総有市。
総有駅からバスで15分ほどの場所にある墓地。
ここにリラの両親が眠るお墓がある。
海の見える小高い墓地。
見晴らしも良く心地よい風が吹いている。
墓地には「東條家」と書いてある。
東條静雄・・・そして東條レイナと書いてある。
リラはそっと手を合わせた。
「お母さん・・・。心配しないでね、家も取り戻せそうよ。・・・あの男の事は任せてね。絶対に・・・仇をとってあげるから・・・」
手を合わせてお墓を見つめるリラの目が、ちょっと怖い目をしていた。
墓地を後にしたリラ。
そのままバスに乗らず歩いて行く。
途中。
リラは公園い立ち寄った。
平日の公園には誰もいない。
公園のトイレに入ったリラ。
トイレの鏡をじっと見つめて・・・
そっと目を閉じるリラ。
すると・・・
スーッと光が降りてきてリラを包んだ。
光が消えると。
リラの姿が変わっていた。
ブロンドの長い髪・・・前髪は長く目が隠れるくらい・・・
「今から、決着つけてくるね。お母さん・・・」
そう、この姿がリラの本当の姿。
母のレイナと同じブロンドの髪。
あの事故の時、結沙がすれ違って反応した女性なのだ。
トイレから出てくると、リラは公園を後にした。
海岸。
高い岩場に勇が佇んでいる。
ちょっとやつれた様な顔をしている勇。
服装もラフなポロシャツにジーンズ姿。
ひげをそっておらず無精ひげが生えている姿は、かなり切羽詰まっている様子が伺える。
誰かを待っているようで時間を気にしている勇。
キラッ。
何かが光った。
勇ハッとして顔を上げると海側に、空中に浮くリラがいた。
「お待たせ。来てくれたのね」
勇はリラを睨みつけた。
「話とは何だ? 単刀直入に言ってくれ」
「そんなに焦らなくても、教えてあげるわよ」
スーッと、勇の傍へ降りてゆくリラ。