起たたない御曹司君の恋人は魔女


「お前は誰なんだ? 何で俺の事を狙うんだ? 」

「そうね、教えないとフェアじゃないわね」


 リラはニヤリと笑った。


「私の名前はイディス。・・・アンタが殺した、レイナの娘よ」


 勇は真っ青になった。

 リラは長い前髪をスーッと上げた。

 クールな切れ長の目に、綺麗な青い瞳が悲しげに揺れている・・・。 


 口元でニヤリと笑ったリラ。



「レイナの名前に聞き覚えが、十分ありますよね? 」

 勇は冷や汗はにじみ出てきた。


「その顔は分かっているようね」

 リラは勇に歩み寄った。


「あの事故は、本当はわざと引き殺したんでしょう? 」

「ち・違う」

「じゃあどうして? そんなに怖かった? 事故を起こして、立ち場を失うのが」

「そうだ。営業部長の立場を無くせば、家族を養えなくなる」

「家族・・・私にも、家族だったの。母が・・・それなのに・・・」


 リラは勇の目前で立ち止まった。


「あの時。気づいていたなら、どうして助けようとしなかったの? 母を引いてすぐに、走り去っているじゃないの・・・」

「な、なに? 」


 リラは鏡を取り出した。


「これは真実の鏡。ここに、あの現場が映し出されたの。貴方が・・・」


 鏡にぼわっと、あの事故の時の様子が映し出された。


 歩いてくるブロンドの髪の女性レイナ。

 歩行者信号は青。

 レイナが渡ってくると、車が勢いよく右折してきた。


 車はレイナを跳ねると、そのまま行ってしまった。



 勇は真っ青な顔をしている。
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