俺様課長のお気に入り
その翌日。
久しぶりに、本社に出勤した。

所属する営業課で挨拶をすませると、女子社員に囲まれてしまった。
自惚れではないが、そこそこ整ったこの顔は、それなりにモテるらしい。
ただ、見た目だけで寄ってくる女には興味がない。
猫なで声で話しかけられて、鬱陶しいだけだ。

そんな女子社員を蹴散らすと、今度は総務課の社員に呼ばれた。
面倒な手続きかと、ため息混じりに向かうと、そこには昨日カフェで出会った、陽菜がいた。
これには心底驚いた。


「失礼男だ!!」

とっちが失礼だと思うような呼ばれ方をしたが、不思議と怒る気はしない。
それどころか、ますますからかいたくなる。

ああそうか。
俺はこいつをかまいたくて仕方がないんだな。


それから、社内での陽菜の様子を見ていると、仕事にまじめに向き合い、いつも一生懸命な様子に、ますます好感を持った。
小さな体で社内を行き来する姿は、まるで小動物のようでかわいい。


いろいろな陽菜を見たくて、週末はケイの散歩を口実に、一緒に出かける約束を取り付けた。
ケイを溺愛する陽菜もやっぱりかわいくて、陽菜のいろんな顔を、一番近くでずっと見ていたいと思った。

今思えば、もうこの頃には陽菜と歩む未来を意識していたのだと思う。

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