俺様課長のお気に入り
少しして、要君がケイ君を呼んだ。

「ケイ、投げるぞ!!」

そう言うと、要君はボールを遠くに投げた。
それを見るや否や、すかさずケイ君が駆け出した。
ケイ君はボールを咥えると、要君の元に帰ってきて、「褒めて褒めて」と言うかのように、瞳を爛々とさせていた。

「ケイ、すごいぞ!ほらもう一回」

またもやケイ君が駆け出した。
数回繰り返した後、要君はボールをフリスビーに持ち替えた。

「陽菜、ケイってフリスビーはできるの?」

「私の投げ方が下手で、失敗しちゃうことが多いけど、兄とならやってたからできるはずだよ」

「そうか、じゃあケイ、いくぞ!!」

「ワン」

要君の動きに合わせて、ケイ君も駆け出した。
そして、フリスビーを落とすことなくキャッチして、駆け戻ってきた。

「ケイ、うまいなあ。運動神経ももちろん、陽菜より上だな」

要君はそう言いながら、ケイ君の頭をわしゃわしゃ撫でて、ケラケラわらった。

私は横からジトーっと睨んだ。
まあ私の睨みなんて、この意地悪で失礼な男にはなんの効果もないだろうけど。


午前中いっぱい遊んで、お昼にしようと芝生広場に移動した。

「はあ、疲れたな」

「歳だもんね」

「なんだと!?」

おっと、小声で仕返ししたのは、バッチリ聞こえていたらしい。

「地獄耳ですね……ひーごめんなさい」

さらに悪ノリする私のこめかみを、大きな手でグリグリし出した。

「い、痛い。ごめんなさい。もう言いません」

「わかればよろしい。さあ、腹減った。早く陽菜の弁当を食わせろ」

「はいはい。わかったよ」

シートの上に、自作のお弁当を広げた。
もちろん、ケイ君のご飯も用意した。

「おっ、うまそうだな」

「どうぞ」

「じゃあ、いただきます」

要君は、最初に唐揚げを口にした。
豪快に咀嚼して飲み込むと、満足そうに笑った。

「陽菜、うまいぞ。俺好みだ」

「よかったあ」

「一つぐらい、得意なところがあってよかったな」

「一つって、バカにしてます!?」

「ははは。素直な感想。この卵焼きもうまい!陽菜の料理なら、毎日食べたくなるな」

ま、毎日……
ん?どういうことだ?

私の戸惑いをよそに、要君はどんどん食べている。



「ああ、うまかった。陽菜、また作ってよ」

そう言うと、これまでのような意地の悪さが一切ない、優しい笑顔を向けてきた。

な、なんだ。
なんか眩しいぞ……不覚にも、どきどきするし。

「ま、また、こういう機会があったらね」

「それなら、またすぐに食べられそうだな」

どういうことですか……?


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