俺様課長のお気に入り
「陽菜、今日はパスタが食べたい」

「うん。いいよ」

帰り道、スーパーに立ち寄った。
店内を2人で回ることが、なんだか気恥ずかしい。
でも、ちょっと楽しくも思う。



買い物を終えて帰宅をすると、ケイ君のことは要君に任せて夕飯を作った。
今夜は、カルボナーラがメイン。
それにスープとサラダを作って完成。

「要君、できたよ」

準備ができて、向かい合わせに席に着いた。

「いただきます」

要君が食べるのを、そっと見つめた。

「しかし、陽菜は料理がうまいなあ」

「そんなでもないけど……ありがとう」

「毎日食べたいぐらいだ」

そう言うと、妖艶な笑みを向けてきた。

「ま、毎日……?」

「そう、毎日。考えておいて」

ど、どういうことだろう……?


「そうだ、陽菜。俺、来週から少し忙しくなるから、お前達を連れ出してやれそうにない。さみしいだろうけど、しばらくの間我慢しろよ」

そう言うと、近寄ってきたケイ君の頭をわしゃわしゃと撫でた。

そっかあ……あんまり会えないのか。
さみしいなあ。

「ひーな、そんなにさみしそうにするな」

「さ、さみしそうって……」

「顔に書いてあるぞ。さみしいって」

思わず顔を抑える。

「ははは。陽菜は素直だな。仕事がひと段落ついたら、またいっぱい遊んでやる。それまでいい子で待ってろよ」

要君は、いつもあまり見せないような、真剣な目で私を見つめた。

「うん」



食事を終えて少し休憩すると、要君が立ち上がった。

「それじゃあ、そろそろ帰るわ」

玄関先でまたふんわりとキスをすると、固まる私をよそに帰っていった。
私の頭の中は、もういっぱいいっぱいだ。


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