俺様課長のお気に入り
その翌日。

お昼過ぎ頃に、営業課に行っていた夏美先輩が、焦ったように私の方へ駆けてきた。

「陽菜ちゃん!!」

「な、なんですか?私何かミスでもしましたか?」

若干怯えつつ、尋ねた。

「陽菜ちゃん、陽菜ちゃんと同期の坂田君が付き合いだしたって本当?」

「えっ?なんのことですか?付き合ってなんかないですよ」

「なんか、噂になってるわよ。紅葉デートに行くとかって」

「な、なんでそのこと……」

「本当に行くの?」

「……はい。坂田君と付き合ってはいないですけど。坂田君が、ケイ君も一緒に紅葉を見に連れて行ってやるって。私に気分転換をさせたいって」

「陽菜ちゃん、それでいいの?岩崎さんのことはいいの?」

「いいも何も、坂田君と出かけるのに、岩崎さんの許可がいるわけじゃないですし……」

なんだか気まずくなって、言葉を濁して俯いた。



「おい、ちび陽菜!!」



突然、大好きな人の大きな声が聞こえて、肩が揺れた。



「お前は何を言ってるんだ?俺の許可がいるんだよ!ていうか、許可なんてするわけないだろ」

「い、岩崎さん!?」

「陽菜、ちょっと来い。吉田さん、少しの間こいつ借ります」

「ええ、どうぞ、どうぞ」

な、夏美先輩、勝手に貸し出さないで……
そんな嬉しそうな顔してないで助けてください……

要君は私の腕をつかんで、ずんずん歩き出した。


「岩崎さん、腕痛いです。どこに行くんですか?」

少しだけ手を緩めてくれたけど、放してくれるつもりはないらしい。
連行される私を、すれちがう人が何事かと見てくる。

「いいから、ついてこい」

久しぶりに要君に会えて、心が躍る。
でも、な、なんかすごく機嫌が悪そうで、わけがわからなくなった。

要君は空いていた会議室に私を押し込むと、ガチャリと鍵をかけてしまった。




< 96 / 137 >

この作品をシェア

pagetop