蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
(いやいやいやいや)

 つり革にぶら下がりながら首を振った。それでも頭はあの感触を何度も再生してしまう。もしあれが現実なら、私のファーストキスということになる。

 ──ちょっと待って。
  私、あのときイカゲソを食べてた。
 そうしたら当然、私の口からはイカゲソの匂いがしていたはずで。


(臭いって思われたかもしれない……)


 新たに判明した問題点にどっと落ち込む。いや、彼だって一本食べたし。そう自分を慰めてもうまくいかず躍起になっていると、キスの直前に聞いた彼の台詞を思い出した。


『残念だな。俺は絶対にお前を嫌いにはならない』


 あれはどういう意味だろう?
 絶対に負けることはないという通告なのか、それとも違う意味があるのだろうか。
 あのときは後者に思えた。だって彼の目はとても優しくて──。


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