蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
〝何号車に乗ってますか? 私は十号車なので、近くなら取りにいきます〟
〝五〟
彼らしい、これ以上削りようがない文字数の返事が返ってくる。無理だろ?という嘲りを一文字で伝えているのだ。
たしかにさきほど停車した大きな駅で乗客が増え、とてもその距離は移動できそうにない。私は諦めて再度メッセージを送った。
〝会社の通用口で受け取ります〟
通用口なんて人目につくことこの上ないのだけど、私の落ち度だから仕方がない。私はスマートフォンをバッグの中に落として目を閉じた。そしてまたキスのことを考え始める。彼はどうしてキスしたのだろう?
ふと隣の乗客の生暖かい息が首筋にかかり、反対方向に少し立ち位置をずらした。
見知らぬ他人の息がかかることすら不快なのに、嫌っているはずの男に唇を奪われたにも拘わらず、嫌悪感がない。むしろ──。