蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
 この一カ月余り見てきた彼はそんな人ではなかった。不愛想で意地悪だけど、私にとってあの家が実家以上に居心地がいいのは、彼がなにも言わずにそう仕向けてくれているからだと思ってきた。

 でも彼が重大なことを私に伏せているのが現実。言いたくない相手だから。言う必要がない相手だから。私はそれを受け止めるべきなのだ。


「事実を明かしてしまったから事情を説明するけど、戸籍上は他人なんだ。社長が今の奥さんと結婚する前のことで、いわゆる私生児でね。すでに亡くなった母親が生前に認知を拒んだことを尊重して、彼は戸籍を動かすことを拒否したそうだ」

「なぜお母さまは認知を拒まれたんでしょうか」

「どうなんだろうね。当時、名門の娘である今の奥さんとの縁談が持ち上がっていて、先代の橘社長が裏で手を回して鷹取部長の母親を追放したそうだ。その際、母親は妊娠していることを明かさず、手切れ金も受け取らなかったそうだ」


 その後、蓮司さんの母親はガンに冒され余命に限りがあるとわかって、ようやく橘社長を訪ねて息子の存在を明かしたという。ひとり残される息子へのせめてもの贖罪だったのだろう。それでも認知を拒んだ母親の気持ちがわかる気がした。


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