蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
「白川を切るつもりですか?」

「どうしてそうなる」

「事実上、そうなるじゃないですか」

「取引先を分散させるのはリスクヘッジだ。それ以上でもそれ以下でもない」


 蓮司さんの突き放すような口調が刃のように胸に刺さった。
 その痛みを感じたくなくて、私は苦し紛れにさらに言い募る。自分でもやめなきゃいけないとわかっているのに。


「東京もですか? 橘ホテル東京にもブーケ・ダンジュのテナントが?」

「俺たちはこういう会話をすべきじゃない」

「これ以外になにを話せと?」

「お前の頭には白川の利益しかないのか?」


 じゃあなぜ私を手元に置いたの?
 どうして私を好きにさせたの?

 あなたはなにも言ってくれないのに、私ばかりがいろんなものを取り上げられていく。
 帰る場所も、心も。


「あなたはなにもわかってない」

「わかってる。今日のことは──」

「違う! わかってない」


 私は思わず立ち上がっていた。

 綾瀬花音の嫌がらせだけじゃない。父が倒れたことも、私が白川に帰ることも、私が彼を好きなことも。それら全部を言いたくても言えない苦しさを。

 でも私が彼に言っていないのだから知らなくて当然だ。なのに責める自分の破綻を自覚していながら、感情をコントロールできない。


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