蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
「彼女の経歴をあまり確認せずお話を受けた私が悪いのでしょうけれど、あんなにゴテゴテした花をお茶席に飾るものではないことぐらい知っていると思っていました。せっかく外国人のお客さまがいらっしゃっているので今日はそのまま行いましたけれど、明日はきちんとお茶席にふさわしいものにしていただけないならば、私は参加を見合わさせてもらいます」


 本来は家元自身が茶花を生けることもできるのだけど、綾瀬花音のスター気取りが鼻についたらしく、茶道を無視した振る舞いを直さなければ協力しないという。
 家元は茶道界の大御所だ。上品で穏やかな佇まいを崩さないから余計に、その口から発せられる怒りの棘にはなんともいえない迫力があった。


「おまけに英語もおできにならないご様子で、なぜこんな企画を持ちかけてきたのか理解できません」


 これらのクレームが綾瀬側に直接伝えられたならまだ二者間で解決するよう静観もできたのだけど、ホテル側の主担当である私に仲介を頼む形で申し立てられたので、私は頭を抱えてしまった。綾瀬花音は打ち合わせでまさにこの点について私を罵倒したのだから、意地でも折れないはずだ。


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