蜜愛婚~極上御曹司とのお見合い事情~
 橘部長にことの次第を説明して指示を仰ぐと、渋々といった様子ながら彼女の説得に向かってくれた。


「僕が言うかな……。女同士だと余計に角が立つよね」


 そうして一応は明日の花材の予定を変更することで合意に漕ぎつけたのだけど、私はそれでも不安を拭えなかった。今日の外国人客のひとりが述べた感想は私が抱いた印象と同じだった。彼女の華道はアレンジメントの器を和風に変えただけに見える、というものだ。
 華道の作法は草木や花を命あるものとして尊重する精神がベースになっているが、彼女にはそれがない。正誤の問題ではなくて、彼女は人前で専門外の華道に手を出すべきではなかったのではないだろうか。


 翌日、私はかなり早起きして出勤した。その気になればできるもので、蓮司さんと別出勤になってからの私は一度も寝坊していない。会社に着くと、私は花材の到着を今か今かと待ち受けた。


「やっぱり……」


 トラックが到着し、搬入口で下ろされる積荷の中からブーケ・ダンジュのコンテナを探しては開封していた私は、そのたびに溜息をついた。流行優先のまま花が小ぶりなものに選び直されているだけで、お茶花に向いていないという点ではなにも変わっていなかった。


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